吊革日々是

先日紹介した記事から、国民的吊革の握り方は「順手」であることが判明した訳であるが、今日電車に乗ってみて自分が「3本掛け」をしていることに気付く。「ほう、俺は3本掛けか……」と呟きながら、おもむろに周囲へ目を遣ってみると、いるわいるわ、こうして注視されているとも知らずに吊革を握りしめ、吊革に運命を委ねている連中が。

ぐるっと見渡してみると、調査の通り多くの人々が「順手」や「4本掛け」だったが、自分の左隣にいた角刈り強面のオッサンが右手拳を輪に突っ込み、時折パーにしたりまたグーにしたりとせわしない。これは何という握り方だろう。「ひとりジャンケン」?……いや、「穴開けパンチ」でいこうか。などと考えつつもその動きに思わず吹き出しそうになるが、吹き出した刹那その拳がそのまま顔面を捕らえて眼鏡を破壊される鮮明映像が脳内に映し出されたので、横を向いて何とか我慢。

すると柄握り、荷棚のパイプ握りな面々が目に飛び込んできた。ふぅむ、やはりいろいろなパターンがあるようだ。と唸っていると、これまでの吊革史に無いような握り方をしている男が登場。彼は右手一本で荷棚のパイプを握りつつ、その親指で吊革を引っかけて握っているではないか! 何という欲張り! 何という個性! 歴史的人物! と盛り上がる自分を傍目に、哀れに歪んだ吊革がうなだれて「どうして俺だけこんな目に……」と嘆いているようにも見えた。

我々は日々それとなく人目を気にして、ある程度は取り繕って生きている訳だが、こと吊革に限って言えば結構みんな気が抜けているというか素のママというか、それぞれの性格がダイレクトに反映されていると感じた。そう、「吊革は心を映す鏡」でもあるのだ。そう考えると、車両はいわば人生劇場。この東京砂漠でたくましくも疲弊して生きている人々にとって、己を体現できる数少ない場なのかも知れない……。
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